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執筆者の写真papaclub

「お掃除」Vol.3



先日、仕事から家に帰ると、リビングの家具の配置が大きく変わっていた。決して広いわけではないリビングの中に、動線を邪魔しない様、出来る限り工夫をしながらレイアウトしている。そんな家具達が、今回ばかりは『私たちが主人公である!』と言わんばかりに、リビングのあちらこちらで、自身の存在を主張していた。  その騒がしい家具達の中に、誇らしげな顔をした長男と、比率的に(笑顔8:ちょっと困った顔2)の妻が立っていた。  妻の話によると、妻と次男がお昼寝をしている間に気を利かせてお部屋のお掃除(彼の中の『掃除』は、模様替えの事を指しているようであった)をしてくれていたらしいのである。そして、新しい家具のレイアウトにはそれぞれ彼なりの意味があるとのことだった。  僕は、とても不思議な気持ちになった。「立派になったな!」とか「偉いな!」といった気持ちよりも、どこか『安心だな』という気持ちになったのである。まだ、5歳そこそこの男の子なのだが、彼なりに妻や、幼い弟のために何かしようと思う気持ちが育っていることに対して、そのように感じたのだろう。  新レイアウトでは、廊下からリビングに入るために最初に開かなければならない扉の目の前に三段ボックスがあり、通り抜けが困難であった。彼にその意味を尋ねると『ここにあった方が便利だよ!廊下に出るときにはもう一つの扉(キッチン側)を使えばいいよ!』と言われた。加えて、今までまとめてあった衣類やオムツ、デイリーで使用するウェットティッシュも見つからない。 『いや、オムツ類は衣服のボックスの隣の方が便利だと思うんだけも…(イライラ)うん、たしかに…そうなんだよね!廊下なんて、キッチンから行けばいーのよね!!(イライラ)………でも…出来れば、近道としてここの扉を使わせて欲しいな…(イライラ)』  そんな、心の声が生まれてしまった不寛容な自分に対し、極寒の地での滝行を命じたい気持ちになりつつ、笑顔でもって彼の説明に耳を傾けた。  その後も家具のレイアウトが変わったことでいつもの場所にいつもの物がなく、探さなければいけないことが手間になり、徐々にストレスゲージが順調に貯まっていった。  確かに、長男の成長を感じることができたことはとても嬉しいことだった。でも、自分が仕事から帰り、いざ家事をするという状況下ではどうしてもそれを手放しで喜ぶことが出来ず、途中から苛立つ場面(タオルはどこにあるのよ!?袋はどこなのよ!?)が増えてしまった。

 夜、全てを終えて布団に入った後、帰宅後の長男とのやりとりの中での自分の不寛容さを思い出し、悲しい気持ちになった。どんな気持ちで彼は私にそのことを伝えようと思ったんだろうか?どうしてもっと彼の話を聞いて、一緒にそのクリエイティビティの理解をしてあげられなかったのだろうか。そう思う一方、勿論家が多少片付いていなくてもいいのだが、やはり雑然とした部屋での居心地は悪く、まだ0歳児がいることで、片付いてないことによるリスクもまた発生しうるのだ。だからこそ、出来れば毎日の家事は素早く済ませたい(そうすれば、僕も、妻も心に余裕が出来て、それが結局は彼らのためになる)という思いもありつつ、でも、それは自分の足りない部分(家事スキルや時間管理、マインドセット等々)への言い訳でもある気がしてきたりと…結局モヤモヤしたまま次の日を迎えたのだった。



甲斐パパ

職業は作業療法士。ふたりの男の子のパパ。長男誕生後、妻や長男との関係性の中で、自身の『父親像』のアップデートの必要性を感じ、2017年よりおおいたパパくらぶに参画。主に団体の企画・運営を担当している。2020年、次男誕生の際、勤務地の男性で初となる育児休暇を約1ヶ月間取得。育休終了後、自らの体験を伝えるため『パパの育休期間スケジュール表』を妻と協力して作成し、高い評価を得る。このスケジュール表をプレパパ講座などで活用できるようにさらに改善し、今後は育休取得を希望するパパたちのサポートを行なっていきたいと考えている。また、子育てを機に通信制大学に編入し、発達心理学を専攻しながら、学術的な側面からも子供から大人までの成長プロセスを学習中。今後はこれらの経験や知見を活かし、自分がそうであったよう、育児に自信が持てないと思っている若いパパ達の力になりたいと考えている。

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